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利益確保のための出口(トレイリング・ストップ) (第19回)利益確保のための出口(トレイリング・ストップ) (第19回)

最終更新日: 2025-07-10

ページ制作日: 2025-07-11


トレイリング・ストップ(trailing stop)

今回は「トレイリング・ストップ」についてご説明いたします。 このトレイリング・ストップは、これまで扱ってきた「損失を限定するためのストップ注文」とは目的が異なり、「すでに得た利益を守るために設定する」ストップです。


トレイリングストップのイメージ

実際の相場においては、この考え方は非常に重要になります。たとえトレンドに乗って含み益が出ていたとしても、その後に相場が反転してしまうと、「さらに下がって、最終的に買値付近まで戻ってしまうかもしれない。 それならば早めに利益を確定しておこう」と考えてしまいがちです。そして、その不安から全てのポジションを決済してしまいたくなることも少なくありません。 このような心理的な影響は、どれほど冷静な投資家であっても完全に避けることは難しいでしょう。 そこで、一部のポジションをあらかじめ利益確定しておくことで、残りのポジションに対しては心理的な余裕を持ちながら運用を継続することが可能になります。

こうした考え方は、相場に限らず他の分野でも通じるものがあります。たとえばスポーツの世界でも同様です。 野球やサッカーにおいて、先制点を取ったチームが試合を有利に進めやすくなるのは、誰もが納得できることでしょう。早い段階で得点することにより、精神的に優位な状態で自分たちのペースを保ちやすくなるためです。 トレイリング・ストップもまた、相場における「先取点」として機能し、落ち着いた判断を支える要素となるのです。

トレイリング・ストップを設定するにあたっては、必ず「価格の動きに追従する性質を持った指標」を使用する必要があります。 たとえば上昇トレンドの場合であれば、価格とともにストップラインを徐々に引き上げていく必要があるため、そのような動きに対応できる指標が求められます。 具体的な例としては、移動平均線やパラボリックのほか、「HLバンドの中心線」「Xバーストップ」「前日の高値・安値」などが挙げられます。 本稿では、これらの中でも特にHLバンドの中心線を用いた手法について、詳しく見ていきます。



トレイリング・ストップ=HLバンドの中心線

プロテクティブ・ストップと同様に、トレイリング・ストップにおいても「HLバンドの中心線」を活用することが可能です。 プロテクティブ・ストップでは、価格がHLバンドの中心線を割り込み、なおかつポジションが損失状態に陥った場合には、速やかにすべての建玉を決済(損切り)する、という考え方を取ります。 一方で、トレイリング・ストップの場合は、同じく中心線を割り込んだとしても、その時点でポジションが含み益になっているのであれば、そのうちの一定割合を利益確定しておく、という運用になります。 こうして一部を利食いしておくことで、万が一その後に相場が逆方向に大きく動いたとしても、それまでの利益を大きく失うリスクを抑えることができるのです。


HLバンドを使ったトレイリングストップ

この手法をチャート上で視覚的に示したものが図1です。
ここでは、A点において新規の買い注文を行い、その後相場は一時的に下落しますが、プロテクティブ・ストップの水準には届かず、再び上昇に転じます。 そしてB点以降は、手数料を加味してもポジションが利益状態となり、HLバンドの中心線はプロテクティブ・ストップからトレイリング・ストップとしての機能へと切り替わります。

さらに進んで、C点で価格がHLバンドの中心線を下回った場面において、ここでトレイリング・ストップが作動します。 この時点でポジションの3割(この割合は任意に設定可能)を利食いし、残る7割の建玉については、その後の相場の推移を見ながらさらなる利益の拡大を目指すという戦略です。 このように、HLバンドの中心線を目安とすることで、利益の一部を確保しながらポジションを維持するという、柔軟で実用的な対応が可能となります。


ただし、HLバンドの中心線をそのまま活用すると、相場が一時的に調整しただけでもトレイリング・ストップが発動してしまうなど、「アソビ」が少ないと感じられる場合もあるかもしれません。 そうした際は、中心線の水準を50%ではなく、たとえば3分の2(67%)といったように調整して運用することで、より自分のスタイルに合った形にカスタマイズすることができます。 ここで何より重要なのは、指標の数値そのものよりも、それをどのような意図と考え方で導入するかという点です。自分の取引スタイルや市場の特性に合わせて、トレイリング・ストップの設定を柔軟に調整する姿勢が、結果的にリスクを抑え、利益を最大化する鍵となるでしょう。



他のテクニカル指標との組み合わせ

移動平均線(MA)

平均線を使ったトレイリングストップ

移動平均線をストップラインに利用する方法があります。具体的には、上昇トレンド時は短期や中期の移動平均線に沿ってストップロスを切り上げ、価格がMAを下回ったときに決済するといったイメージです。

  • A地点(新規買い)
  • 移動平均線(赤線)をローソク足が上抜け、価格が上向きに転じたタイミングで「新規買い」を実行します。移動平均線が右肩上がりに転換しており、上昇トレンドの初動が期待される局面です。
  • その後の推移
  • 価格は順調に上昇し、移動平均線もそれに伴って切り上がっていきます。この移動平均線に沿ってトレイリング・ストップの水準も引き上げていくことで、利益を伸ばしながらも下落リスクに備えることができます。
  • C地点(トレイリングストップがヒット)
  • 上昇後、価格が反落して移動平均線を明確に下回ったタイミングで、トレイリングストップが発動しポジションを決済。 このタイミングで利確となり、それまでの上昇分の利益を確保することができました。


パラボリックSAR

パラボリックを使ったトレイリングストップ

パラボリックSARというトレンド追従型のテクニカル指標を使ってトレイリング・ストップを運用した例です。 Aのポイントでは、パラボリックのドットがローソク足の下に転じたことを確認し、新規の買いエントリーが行われています。その後、価格の上昇に伴ってパラボリックのドットも切り上がっていき、ストップラインとして機能します。 価格が上昇している間は、ドットは常にローソク足の下に位置しており、利益を伸ばし続けることができます。 やがて、Cの位置で価格が反落し、ローソク足が初めてパラボリックのドットに接触したことで、トレイリング・ストップがヒットし、ポジションは自動的に決済されました。 これにより、上昇トレンドで得た利益を守ることができた形になります。パラボリックは視覚的に分かりやすく、トレンドが継続しているかを明確に判断しやすいため、初心者にも扱いやすい指標のひとつです。



自分なりのルール作りとデモトレードのすすめ

トレーリング・ストップは設定方法や運用の仕方次第で、損失を抑えつつ大きな利益を追求する強力な手法です。 しかし、その効果を引き出すには「自分なりの運用ルール」を明確に決めることが重要です。たとえば、どのくらいの幅でトレーリングを開始するか、どの指標をストップの基準とするかなど、自分の取引スタイルやリスク許容度に合わせてルールを作りましょう。 そして最初から本番口座で大きなロットを使うのではなく、小さいロットやデモ口座で試しながら慣れていくことをおすすめします。 実際の資金を使わずに練習すれば、設定やタイミングが適切かを確認でき、リスクを抑えて経験値を積むことができます。まずはここで学んだことを参考に、少額やデモトレードでいくつかのパターンを試しながら、自分に合ったトレーリング・ストップのルールを作ってみましょう。




第20回に続く 第20回に続く(coming soon)

第18回 利益を損失に変えない「引き分け」決済注文 第18回 利益を損失に変えない「引き分け」決済注文


tradingview社のチャートを利用しています。



執筆者の写真

監修:安村 武彦

国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト(CFTe)・AFP(日本FP協会認定)
大阪府出身。1987年に商品先物業界に入社。2005年末に業界を離れ、2006年より専業トレーダーとして商品・株式・FXの売買で生計をたてる。個人投資家が相場で勝つためには、投資家目線のアドバイスが必要不可欠と感じ業界へ復帰。真のアドバイザーを目指し現在に至る。個人投資家向けに開催する一目均衡表のセミナーは非常に分かりやすいと好評を得ている。

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