トレンドの定義の仕方 (第8回)
最終更新日: 2024-10-04
ページ制作日: 2024-10-04
トレンドの定義の仕方
さて、トレンドはその形態から3つに分類できると述べました。一般的にはそう言われていますが、「保ち合い」というのはトレンドがない状態であり、トレンドの種類に入れるべきか、入れないべきかは議論の余地があります。
値動きの足跡はグラフで表現できます。その形状を見て、左から右へ価格が上昇していればアップトレンド、下降していればダウントレンドとなります。 チャートを構成するのは縦軸と横軸で、縦軸は価格、横軸は時間を表します。価格は単なるモノの値段に過ぎませんが、市場参加者にとっては、その上下によって保有ポジションの損益が増減します。 損失が一定水準まで膨らむと、リスクマネジメントの観点から、ロスカット(損失が過度に膨らむのを防ぐための損失確定手段)が発動されます。
つまり、横軸は「時間」、縦軸は「損益の物差し」と言えます。
トレンドは基本的に縦軸と横軸(価格と時間)のバランスがかみ合った状態です。トレンドが継続することは、このバランスが取れた状態を意味します。一見動いていないように見えるフラットな状態は、実は不安定な極限状態に向かって進んでいると考えられます。
一見安定に見えるもみ合い相場の不安定性
ソビエト連邦共和国は第1次世界大戦後に社会主義国家として1922年に誕生し、1991年に消滅しました。
社会主義国家として統制経済を採用しましたが、世の中は何一つとして一箇所に留まることはできません。動いているのが世の中であり、動かないところには進歩は生まれません。
固定性で成功した例は過去に一度もありません。固定性は「進歩しよう・進化しよう」という人間の本能に反するものです。
つまり、もみ合い相場は一見安定しているように見えても、実際には不安定な状態に進んでいると言えます。市場は常に変化し続けており、その静けさは次なる大きな動きの前触れかもしれません。
フラットな相場に潜む不安定性とトレンド転換の捉え方
「フラットな状態」とは、時間が経ってもポジションの損益に大きな変化が出ない状態です。買った(または売った)はいいものの、その後まったく価格が動かず、時間だけがどんどん過ぎていく。
例えば、商品相場には期限があります。半年から1年強という限られた時間の中で価格が動かないとしたら、皆さんならどうしますか。そのような相場にずっと居続ける価値があるのでしょうか。
市場参加者の欲求不満は膨らむ一方です。「もうそろそろ動くだろう」「近々に大きく動くはずだ」と期待し続け、期待倒れで時間ばかりが過ぎていく。
長期間フラットな状態が続くと、市場参加者は「ポジションを解消して、他の動きのあるものに乗り換えたほうがマシだ」と考えるようになります。フラットな状態が長ければ長いほど、市場はこのような心理の人々で満ち溢れてきます。
外から見れば安定した状態に見えるフラットな相場も、市場の心理を覗けばフラストレーションに満ちた状態です。不安定な状況が極限まで達し、何かのきっかけで動き始めると、再び安定した方向へと走り出します。これがフラットな状態の真の姿です。
つまり、トレンドを捉えて儲けるということは、大きな変化(ビッグチェンジ)を捉えることです。不安定な状態から安定した状態へ移行する、その変化の初動を捉えれば、多大な利益を手にすることが可能です。
トレンドに途中から乗ることもできますが、得られる利益の幅は小さくなります。大きな利益を狙うのであれば、トレンドの転換点を捉える必要があります。フラットという不安定な状態から安定した状態に移行するタイミングのほうが、効率的ではないでしょうか。
極端にフラットな状態は、嵐の前の静けさである可能性あり。
スケールの統一化
ここまででトレンドの形態を大きく分類できました。分類方法がはっきりしていれば、トレンドの方向性の判断に迷うことはないでしょう。 しかし、環境の判断基準となるスケールの問題が残ります。 相場観について議論するときに全く話が噛み合わないことがあります。Aさんはとあるチャートを見て「ここはアップトレンドに転換しているから押し目買い方針だ」と主張。 Bさんは「まだダウントレンドが継続している中の自律反発場面で戻りは売りだ」と主張。全く同じチャートを見ているにもかかわらず両者の言い分は真反対です。これは次のような理由によると思われます。
同じチャートを見ても、判断が真反対になる理由はスケールの違いによるものです。
図1のAの地点を見てください。Aの地点をアップトレンドと判断する人もいれば、ダウントレンドの中と判断する人もおられるでしょう。 ダウントレンドと判断した人は大きな流れの中で現在の位置をとらえており、アップトレンドと判断した人は短期間の中における現在の位置をとらえているわけです。 このようなケースで分かるように、捉えようとしているものの違いによって見方が正反対になります。このケースで2人の意見が合意することは不可能といえるでしょう。 なぜなら2人の意見の物差しを照らし合わせれば、それぞれの言い分が正しいということになるからです。ですから重要なことは、その物事をどのようなスケールでとらえているのかという判断基準を統一することです。
図1
このことは、これからトレンドについて考えていくときに重大な問題になります。
トレンドフォロワーはトレンドが存在するという優位性から利益を上げますが、どれくらいのスケールでトレンドを捉えているのかを明確にする必要があります。
例えば、週足ベースでの値動きを基準にするのか、日足ベースの値動きなのか、あるいはもっと短いレンジの値動きなのか、基準となるべきスケールを事前に定めておかないと、優位性が曖昧になります。
人それぞれのスケールによってトレンドに関する見解が異なることを説明しました。もう一度説明しておきます。トレンドは長期・中期・短期に分けることができます。何をもって区別すればいいのか、図2をご覧ください。
図2
長期のアップトレンド…1→6の動き
中期のアップトレンド…1→2、3→4、5→6の動き
短期のアップトレンド…A→B、C→Dの動き
どのトレンドを捉えるかは、自分がどの時間の概念で相場に向かいたいかによります。トレンドを定義する方法にはさまざまな方法があります。
比較論であり、今あるポイントが過去のある地点より低ければダウントレンド、今あるポイントが過去のある地点より高ければアップトレンドと認識します。これはスケールの取り方によって判断が異なります。
また、どの指標を使うかによっても捉え方が異なります。トレンドを認識するのに有効な手法は、移動平均、ボリンジャーバンド、パラボリック、平均足、そして本コラムで紹介するHLバンドなど、いくつも存在します。
どれが一番優れているとは言いかねます。ここでは学習法について説明することが目的なので、あまり多くの技術を紹介すると混乱を招く恐れがあります。理論的に相場の原理を理解しやすいダウ理論を中心に紹介します。
ダウ理論を活用したトレンドフォローイングの基本と応用
ダウ理論は理論的に非常に明確で、ポイントを捉えやすく、難しい計算が必要ないという点で優れています。
チャートに線を引くだけでトレンドを判断できます。ただし、ダウ理論はトレンドを認識するための本質的な方法論であり、指標を用いてダウ理論に基づくパターンを認識するのが正しいと言えます。
この点を理解しておかないと、トレンド認識から売買技術(エントリー&エグジット)へ進むにつれ混乱する可能性があります。
理論的に明確なトレンドを正しく認識することは、大きなメリットです。ダウ理論をマスターしトレンドを判断できれば、それは大きな武器になります。ただし、欠点もあり、トレンドを認識するシグナルの発生が遅れることです。
確認できるポイントが遅いことはデメリットですが、だからといってダウ理論を無視するのは早計です。感応度の遅い指標は正確性が増しますが、感応度の早い指標は正確性に欠けるという特徴があります。
どの指標を採用するか、またどのスケールで相場を判断するかは個人の判断に任せるべきです。ただし、最もシンプルで使いやすい指標を一つ覚え、それをベースにさまざまな指標を理解し、理論を応用できるようになることをお勧めします。
結局、どの理論に基づいてトレンドを認識するかは自分次第ですが、その理論の根幹にある部分を理解し、応用できるようになることが重要です。
これまでにも説明したように、トレンドを追いかけることを目的としたトレンドフォローイングでは、その実現のためにダウ理論を採用しています。
ダウ理論は、大きな流れに沿った売買、つまりトレンドの方向性を利用した売買に最適だと思います。目先の小さな値動きを捉えるのではなく、大きなトレンドに乗って利益を上げるという手法です。これは、世界のトップトレーダーの多くが採用している売買手法の一つです。
トレンドフォローイングの基本的な考え方は、鈍くても大きな流れを捉え、大きな幅を狙いに行くというものです。
大きな流れが出るかどうかは時間が経過しないとわかりませんが、その間はリスク管理を徹底し、損失を軽減します。勝率は高くなく、3回のうち2回は負けるかもしれませんが、1回の勝ちで負け分を相殺できる利益を狙うのが基本的な考え方です。
第9回に続く(coming soon)
第7回 トレンドの定義とその重要性
※tradingview社のチャートを利用しています。
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