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トレンドの定義とその重要性(第7回)トレンドの定義とその重要性(第7回)

最終更新日: 2024-10-04

ページ制作日: 2024-09-20


トレンドの定義とその重要性

トレンドに逆らわず、その流れに乗る。そしてリスクマネジメントを確実に行い相場に勝つ方法について、これまで解説してきました。ここからは、トレンドそのものについて詳しく見ていきます。


平家と源氏の物語

平家と源氏の物語は広く知られており、その中でも壇ノ浦の戦いは特に有名です。 壇ノ浦が位置する関門海峡は潮の流れが速く、戦いの行方を大きく左右しました。初め、平氏はこの潮の流れを巧みに利用し、水軍を駆使して海戦に不慣れな源義経軍を翻弄しました。潮の流れが彼らに有利に働き、源氏軍は苦戦を強いられました。

しかし、戦いの途中で潮の流れが反転し、形勢は一転します。この反転する潮流を機に、源義経は猛反撃を開始しました。 潮の流れに乗った源氏軍は一気に勢いを増し、結果として大勝利を収めました。一方、平家は逆流に抗う形となり、完全に崩壊しました。

源平合戦

この戦いは、自然の流れに逆らうことの不利さを如実に示しています。 相場においても、トレンドに逆らうことは同様に不利です。潮の流れに逆らう平家のように、トレンドに逆らえばどれほどの力量があっても勝利は難しいのです。
したがって、圧倒的に不利な状況に自らを置く必要はなく、賢明な判断が求められます。源平合戦から学べる教訓として、トレンドに逆らわず、その流れをうまく活用することの重要性が挙げられます。 潮の流れを巧みに利用した源氏の勝利のように、相場においてもトレンドの流れを理解し、それに乗ることが成功の鍵となるのです。

The trend is your friend. 「トレンドは味方だ!」米国の相場格言です。


優位性とは何か

ここで大切なのは「優位性」という概念です。川上に立つということは、優位な状況に身を置くことを意味します。英語ではこれを「エッジ(Edge)」と呼び、「エッジが存在している」「エッジのある売買をせよ」といった表現が使われます。 勝負に勝つ人は、この優位性を掴むことに長けているのです。

名将と呼ばれる人たちは「負ける戦はしない」と言われています。彼らは勝ちやすい状況(エッジ)が存在する時のみ勝負し、それ以外は無駄な戦を仕掛けません。 市場は完全無欠ではなく、じっと待っていれば必ず歪みが生じます。その歪みが生じたときに、勝ちやすい方に乗ればよいのです。

有名な経済学者ケインズは、株式投資を「美人投票」に例えました。この美人投票とは、投票者が100枚の写真の中から最も美しい1枚を選び、最も投票が多かった人に投票した人達に賞品を与えるというものです。 この場合、各投票者は自分の好みではなく、他の投票者の好みを予測して選びます。

美人投票

ケインズのこの例は、株式投資においても同様の戦略が有効であることを示しています。つまり、市場参加者の多くが値上がりするであろうと予想する銘柄を選ぶことが重要だということです。 相場で勝つためには、他人の動きを予測し、その流れに乗る「日和見主義者」になることが必要なのです。 このように、ケインズの美人投票の例から学べる教訓は、市場のトレンドや他の投資家の動きを理解し、それに沿った投資行動を取ることが成功への鍵であるということです。

本コラムではトレンドフォローという手法中心に話を進めていきます。トレンドフォローの優位性が存在する環境はトレンドが存在する環境を指します。 しかし、市場には様々な売買手法があり、それぞれの優位性は異なります。短期売買ではエネルギーの偏り、オプション取引ではボラティリティーの急激な変化や残存期間などが優位性となります。 優位性とは、それぞれの売買手法にとっての優位性であり、トレンドそのものが全ての売買手法の優位性につながる訳ではないことを誤解しないで頂きたいと思います。


トレンドの認識

「トレンドの認識」とは、優位性が存在する環境を見出す作業です。 リスク管理の重要性を理解した上で、環境認識の重要性も理解する必要があります。売買手法が異なっても、その手法に沿った優位性を見出すことが可能です。 トレンドフォローだけが利益を生む手法ではありませんが、トレンドフォローは長期に渡って非常に有効な売買手法であることは事実です。


トレンドの定義

トレンドとは何でしょうか。商品相場や為替、株式など、あらゆる場面で「トレンド」という言葉を使います。 「この相場はアップトレンドだ」、「これはダウントレンドだ」と。では、アップトレンドとは何でしょうか。

多くの人はチャートを見てそれがアップトレンドかダウントレンドかを判断できますが、それを言葉で説明するのは難しいです。 トレンドとは、左より右が高いからアップトレンド、左より右が低いからダウントレンドといった比較論です。しかし、これだけでは実際の相場の中でアップ(ダウン)トレンドを定義するには不十分です。 頭では何となく分かっていても、言葉で表現することが出来ない。これでは本当にトレンドを理解しているとは言い難いと思います。 トレンドに逆らえばどのような憂き目に遭うかは、これまでに述べてきた通りです。そうならない為にもトレンドというものをはっきりと定義付けてやる必要があります。

「トレンド」とは具体的には、どういうものなのでしょうか?


トレンドの3種類

アップトレンド(上昇相場): 市場が持続的に上昇するトレンド。
アップトレンド

ダウントレンド(下降相場): 市場が持続的に下降するトレンド。
ダウントレンド

保ち合い(トレンドがない状況): 市場が一定の範囲内で上下するが、明確なトレンドがない状況。
ダウントレンド


実際の値動きを細かく見れば、緩やかなアップトレンドや急激なアップトレンドなど、いくつにも分類することが出来ます。 そのため、こうした値動きをたった3つのカテゴリーに押し込むのは、強引なやり方かもしれません。しかし、残念ながら世の中のすべての複雑な現象を複雑なまま捉え、理解することは不可能に近い作業です。 判断基準が複雑になればなるほど、選択肢の数が増え、正しい答えにたどり着く可能性が低くなってしまいます。

そこで必要となるのが、「単純化」という作業です。すべてを完全に再現することは不可能なので、できる限り物事を単純なカテゴリーに絞り込むことで、見えないものが見えてくるのです。 ですから、トレンドを大別した3つのカテゴリーに強引にでも当てはめてしまいます。


環境認識

実際の分析作業では、トレンドだけでなく、その他の様々な環境、例えば、ボラティリティー(値動きの変動性)や出来高(取引量)を通常に比べて大きいか小さいかといった具合に分類します。 そうすることで、「アップトレンドで、ボラティリティーが大きく、出来高も大きい」といった具合に、単純化された結果を再構築することができます。 これにより、複雑すぎて理解できなかった全体像がはっきりと見えるようになってきます。このプロセスを通じて全体像を認識できて初めて、そこに優位性が存在しているかどうかを判断することができるのです。

これら3つのトレンドを理解し、それぞれの環境に適した売買手法を選ぶことで、相場での成功確率を高めることができます。

複雑な事象を単純化し、特定のパターンに当てはめることで、理解しやすくする。



第8回 トレンドの定義の仕方 第8回 トレンドの定義の仕方

第6回 負け組と勝ち組ともう一つ 第6回 負け組と勝ち組ともう一つ


tradingview社のチャートを利用しています。



執筆者の写真

監修:安村 武彦

国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト(CFTe)・AFP(日本FP協会認定)
大阪府出身。1987年に商品先物業界に入社。2005年末に業界を離れ、2006年より専業トレーダーとして商品・株式・FXの売買で生計をたてる。個人投資家が相場で勝つためには、投資家目線のアドバイスが必要不可欠と感じ業界へ復帰。真のアドバイザーを目指し現在に至る。個人投資家向けに開催する一目均衡表のセミナーは非常に分かりやすいと好評を得ている。

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