エントリーよりも重要な「出口」の話 (第15回)
最終更新日: 2025-05-22
ページ制作日: 2025-05-23
入口は一つ、出口は二つ
これから、売買における「入口」と「出口」についてお話しします。
相場の世界では、入口は一つ、出口は必ず二つ存在します。一つの入口に対して、二つの出口。さて、この二つとは何でしょうか?
まず、一つ目の出口は「利食い(りぐい)」、つまり利益を確定するための出口です。
そして、もう一つは「損切り(そんぎり)」、損失を確定するための出口です。できれば避けたい出口ですが、実はこの損切りこそ非常に重要な役割を持っています。
できるだけ早い段階、初心者のうちに数多く経験しておくべきだと私は考えています。
「エントリー&エグジット」を日本語に訳すと、「入口と出口」という意味になります。
エントリーとは市場に参入すること(=ポジションを持つこと、新規に買ったり売ったりすること)、
エグジットとは市場から退出すること(=ポジションを手放すこと、売ったり買い戻したりすること)を指します。
ここで振り返りますが、これまでに「リスクマネジメント」と「トレンドの定義」についてお話ししてきました。
それにもかかわらず、具体的な売買方法にはまだ触れてきませんでした。
なぜ売買手法の話をここまで引き延ばしたのか――賢明な皆さんなら、すでにお気づきかもしれません。
この順番には大きな意味があります。
リスクマネジメントと優位な環境(トレンド)の認識が、どれほど大切かは、すでにご理解いただけたでしょう。
この二つは、相場に挑む者であれば誰でも必ず身につけなければならない「常識」なのです。
しかし、現実には、多くの投資家がこれらをおろそかにし、一番面白そうに見える「売買」だけにいきなり飛び込んでしまいます。
そして、多くの人があっけなく負けてしまうのです。
これまでにも説明した通り、たとえトレンドを正しく認識できていても、リスク管理ができなければ負けます。
まして、トレンドの認識もリスク管理もできていなければ、負けるのは当然の結果です。
さらに厄介なのは、もしこのような準備不足のまま、運よく勝ってしまった場合です。
それは、その人にとってむしろ最大の不幸の始まりかもしれません。
たとえば、何も知らないまま初めてトレードをして、偶然にも勝ってしまった場合(いわゆるビギナーズラック)。
このとき、人は「自分は相場が上手い」と勘違いし、自分の勘に過剰な自信を持つようになります。
そして次のトレードでは、初めの勝利で得た偶然の利益に味をしめ、さらに大きなポジション(取引量)を持とうとするでしょう。
しかし、偶然はいつまでも続きません。
相場が思惑とは逆方向に動いたとき、初心者は前回よりもはるかに大きな金額を抱えたまま、なすすべもなくオロオロするしかありません。
そして最後には、最初の勝利で得た利益も、それ以外の資金も、すべて失ってしまうことになるでしょう。
相場の常識
皆さんは、売買を始める前に必ず「リスクマネジメント」と「優位な環境(トレンド)の認識」をマスターしてください。
これが、相場の世界における基本的な「常識」です。
これからお話しする内容は、皆さんがこの二つをすでに身につけていることを前提に進めます。
さて、「入口は一つ、出口は二つ」とは、実際のトレードにおいて何を意味するのでしょうか?
冒頭でも触れた通り、入口とはポジションを作ること(取引を始めること)、出口とはポジションを解消すること(取引を終えること)を指します。
そして「二つの出口」とは、取引終了時に次のいずれかになる、ということです。
- 利益が出ている場合(利食い)
- 損失が出ている場合(損切り)
ここまでは、それほど難しい話ではありません。誰でも理解できるでしょう。
しかし、ここからが重要なポイントです。
出口が二つあることは、ポジションを持つ前から分かっています。
だからこそ、ポジションを持った時点、あるいは持とうと決めた段階で、「どこまで損が出たら損切るか」「どうなったら利食うか」をあらかじめ決めておく必要があるのです。
ここで注意してほしいのは、私が「どこで損切るか、どうなったら利食うか」と表現している点です。
「どこで利食うか」と言っていないのには理由があります。
実際に相場を経験すれば分かりますが、トレンドフォロー型の取引では、事前に利食いポイントを決めるのはあまり得策ではありません。
なぜなら、相場がどこまで動くかは市場が決めることであり、自分の思い通りに動いてくれるわけではないからです。
つまり、相場は私たちがコントロールできるものではないのです。
では、相場の中で唯一自分がコントロールできるものは何でしょうか?
それが、先ほど触れた「どこで損切るか」というポイントです。
ポジションを持つ(エントリーする)ことは誰にでもできますが、どこで退出するか(エグジットするか)によって、結果が利益になるか損失になるかが決まるのです。
そして、「損切りのルールを決めること」こそ、自分の意志でコントロールできる唯一の領域です。
だからこそ、損切りラインは必ず事前に設定しておくべきなのです。
しかし残念ながら、ほとんどの人は「とりあえずエントリーして、状況を見ながら出口を考えよう」としてしまいます。
けれど、人間の心は基本的に弱く、すぐに迷ったり、動揺したりするものです。
ニュースを見ては気持ちが揺れ、噂話を聞いてはまた心が揺れる。
そのうち、自分がなぜ最初に買おう(売ろう)と思ったのか、その理由すら忘れてしまうこともあります。
もし儲かっているときなら、まだ何とかなるかもしれません。しかし、損をしているときにこのような状態に陥ったら、目も当てられません。
相場のセオリー(基本原則)から見れば、本来持ち続けるべき場面で慌てて売ってしまったり、本来もっと利益を伸ばすべき場面で早々に利食ってしまったり、といった失敗を繰り返すことになります。
これでは良い結果は望めないのは当然です。
こうした事態を避けるためにも、相場に入る前に「どうなったら相場から退出するか」をあらかじめ決めておくことがトレードをする上で最も大切なことの一つです。


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