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ダマシを回避するHLバンドフィルターの実践方法

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ダマシを回避するHLバンドフィルターの実践方法 (第16回)ダマシを回避するHLバンドフィルターの実践方法 (第16回)

最終更新日: 2025-06-06

ページ制作日: 2025-05-30


スイングHLによるエントリー

まずは、トレンドの認識について以前に説明した「スイングHL」(※スイングの高値〈High〉と安値〈Low〉を判定する方法)を用いたエントリー方法です。

スイングハイローの実践投入 スイングハイローについてはこちらをご覧ください。

図1をご覧ください。これは週足チャート上でスイングHL(5Bar)によってトレンドの定義を試みた例です。 このチャートでは、「Ⓐ点」「Ⓑ点」「Ⓒ点」「Ⓓ点」「Ⓔ点」「Ⓕ点」がそれぞれ大きなトレンドの転換点になっています。従って、これらのポイントでエントリーすることが考えられます。 具体的には、「Ⓐ点」「Ⓒ点」「Ⓔ点」はそれまで続いていたダウントレンド(下降トレンド)からアップトレンド(上昇トレンド)へ転換したポイントであり、「Ⓑ点」「Ⓓ点」「Ⓕ点」はアップトレンドからダウントレンドへ転換したポイントであることが確認できます。

図1
売買における「入口」・「出口」

一見すると図1のチャートでは、Ⓐ点で買ってⒷ点で売る、Ⓑ点で新規に売ってⒸ点で買い戻す、Ⓒ点で買ってⒹ点で売り抜ける、Ⓓ点で新規に売ってⒺ点で買い戻す、そしてⒺ点からⒻ点まで同様に取引するといった具合に立ち回れば、大きな利益を手にできたはずです。 しかし、これはあくまでも時間が経過した「後」だからこそ「Ⓐ~Ⓕの各ポイントがトレンド転換点だった」と判断できるのであって、リアルタイムの相場でこれほど簡単に転換点を見極めることはできません。

リスクマネジメントとトレンドの定義

例えばⒶ点が本当にトレンドの転換点だったかどうかを確認できるのは、さらに時間が経過してチャート上に「a」の地点(※Ⓐ点が転換点だったと判明するポイント)が現れてからです。 同様に、Ⓐ点・Ⓒ点・Ⓓ点・Ⓔ点・Ⓕ点についても、それぞれ後になってから「b」・「c」・「d」・「e」・「f」の地点に至って初めて転換点だったことが確認できます。

メジャートレンド(主要な大きなトレンド)が変わった瞬間は、本来エントリーに最適なタイミングです。 しかし、メジャートレンドの変化をこのようにダウ理論(※高値と安値の動きからトレンド転換を判断する理論)で捉えようとすると、「十分な時間が経過しないと転換を確認できない」という欠点が露呈します。 この欠点は当然、最終的な手仕舞い(ポジション決済)の遅れにもつながります。結果として、実際に取引できる値幅(利益を狙える価格変動の幅)は極めて小さくなってしまいがちです。

そこで、エントリー自体はメジャートレンドの転換点で行いつつも、一部のポジションは短期指標が反転のシグナルを示した段階で素早く手仕舞いし、少しでも多くの利益を確保する——これが今回紹介するアイデアの要点です。



HLバンドを用いたエントリー

では次に、HLバンド(※一定期間の高値〈High〉と安値〈Low〉を結んで帯状に表示したテクニカル指標)を用いたエントリー方法を紹介しましょう。 HLバンドを売買シグナルとして用いる場合、価格がハイバンド(上側のバンド)を上抜いたら「買い」のシグナル、ローバンド(下側のバンド)を下抜いたら「売り」のシグナルとみなします。


図2
リスクマネジメントとトレンドの定義

図2をご覧ください。NYダウ平均の日足チャートに20日間のHLバンドを表示したものです。チャート上のA点・B点・C点では価格がハイバンドを上抜いており「買いエントリー」のシグナルが出ています。 逆にD点・E点・F点では価格がローバンドを下抜いており「売りエントリー」のシグナルが出ています。


■ ダマシを回避するためのフィルター

HLバンドによるブレイクアウト手法は非常にシンプルで有効ですが、近年この手法を使う人が増えたために「ダマシ」(※ブレイクアウトの失敗による誤シグナル)が増加しています。 そこで、そのダマシを防ぐ工夫として、HLバンドの上下に何%や何円、あるいは何刻みといった一定のフィルターをかける方法があります。 例えば、ハイバンドからさらに○%上乗せした水準をブレイクアウトと見なす、あるいはローバンドから△円下落した水準をブレイクアウトと見なす、といった具合に、事前に定めた値幅だけ余裕を持たせてからエントリー判断を行うのです。 また、このようにブレイクアウト基準に値幅のフィルターを加える手法とは別に、パターン認識による条件を付加するフィルターも有効です。例えば、次のような条件をブレイクアウト時に課す方法が考えられます。


  • 陽線でブレイクアウトした場合のみエントリーする(上抜きの場合、その日のローソク足が陽線〈終値が始値より高い〉だったときだけ有効とする)
  • 終値がバンドを抜いた場合のみエントリーする(ローソク足の終値がHLバンドを明確に抜けて引けた場合のみシグナルと見なす)
  • 安値がバンドを抜いた場合のみエントリーする(下抜きの場合、その日のローソク足の安値がローバンドを割り込んで終えた場合のみシグナルとする)
  • ブレイクアウト後2日連続で終値がバンドの外側にとどまった場合のみエントリーする
  • ブレイクアウトした日の終値と翌日の安値がともにブレイクアウト水準の外側にある場合のみエントリーする

値幅を加えるタイプのフィルターよりも、こうしたパターン認識に基づくフィルターの方が、実戦では有効に機能することが多いように思います。 特に最近はブレイクアウト直後の2日間に、逆張り志向の短期売買による反対エントリー(戻り売りや押し目買い)が発生しやすい傾向があります。 そのため、ブレイクアウト後2日間は価格が元の水準内に戻らないことを確認してからエントリーする方が安全かもしれません。

もっとも、どんな手法にもメリットとデメリットがあります。 このフィルター手法も例外ではありません。メリットは先述の通り、ダマシの発生を抑えることで無駄な損切りを減らし、損失の拡大を防げる点です。 一方、デメリットは、本来なら取れていたはずの大きな値幅(利益)を取り逃がす可能性がある点です。つまり、机上では非常に効果がありそうなフィルターも、実際の相場ではほんのわずかな条件差で効果が損なわれてしまう微妙なバランスの上に成り立っています。 安易に導入すれば、かえって利益を減らしてしまう恐れもあるのです。

したがって、売買システムを検討する段階では、最初はフィルターを使用しないことをお勧めします。 フィルターは、本当に有効な基本システムが出来上がった上で微調整として用いることで、初めて意図した効果を発揮します。基本の売買システムだけでは利益が出ていないのに、フィルターを加えて利益を上げようとするのは間違った考え方であり、決してうまくいきません。 仮にフィルターを追加してテスト上うまくいっているように見える場合でも、それはおそらく過度な最適化(カーブフィッティング)による結果でしょう。その設定を信じて実際に取引すれば、悲惨な結果が待っている可能性が高いのです。



フィルターのかけ方

こうした点を踏まえた上で、フィルターの具体的な適用例を紹介しましょう。例えば「2%のフィルター」を付ける場合、ハイバンドの価格が1000円であればブレイクアウトと見なす基準値は1000円の2%上、つまり1020円です。 ここに+1刻みを加えますので、実際の買いエントリー逆指値(買いストップ)は1021円となります。一方、ローバンドの価格が900円であれば基準値は900円の2%下、つまり882円です。ここから-1刻み差し引いた881円が売りエントリー逆指値(売りストップ)の価格となります。 では刻み値が10円単位の場合はどうでしょうか。売り逆指値の基準値882円から10円を引くと872円になりますが、実際には価格は10円刻みでしか発注できません。 したがって、この場合は870円が正しい逆指値ということになります。

次に、「ブレイクアウト後2日連続で終値が上回って(下回って)いた場合のみエントリーする」というフィルターをチャートで具体的に確認してみましょう。 図3は金先物(日足)チャートに20日間のHLバンドを表示したものです。この図では①点が売りエントリーポイントとして示されています。 しかしその後の値動きを見ると、①点でのエントリーはダマシだったことがわかります。図4は、図3のHLバンドに前述のフィルターを適用したものです。図3では、図3の①点におけるダマシのシグナルを回避できていることが確認できます。


図3
リスクマネジメントとトレンドの定義

図4
リスクマネジメントとトレンドの定義

フィルターを使ったHLバンドのエントリー例
  • 1日目(ブレイクアウト発生日)
  • 価格がHLバンドを突き抜けた日です。この日にブレイクアウトのシグナルが点灯しても、すぐにはエントリーしません。まずその日の終値がブレイクアウト水準より外で引けたか確認します(終値がハイバンドより上、またはローバンドより下で終わったかどうか)。

  • 2日目(フィルター)
  • 翌日も引き続き終値がブレイクアウト水準の外側にあるか確認します。2日連続で終値がバンドの外にとどまった場合にのみ、ブレイクアウトが有効(継続)と判断します。

  • エントリー判断
  • 上記が確認できたら、3日目の始値や2日目の終値でエントリーするなど、実際のエントリーを行います(運用ルールによってエントリータイミングは異なりますが、重要なのは2日間の確認を経てから入る点です)。

最後に一点、留意すべきことがあります。HLバンドはエントリーのトリガーとして非常に有効な指標ですが、その弱点(ダマシの多発)もフィルターである程度補えることがわかりました。 しかし、どんな商品にも等しく有効な万能の手法などというものが果たして存在するでしょうか。

例えば、穀物市場の値動きと、金利商品である債券市場の値動きでは、明らかに性質が異なります。小麦などの穀物相場は、過去に10年に1度ほどの割合で大干ばつなどをきっかけに非常に大きな価格変動(急騰・急落)を見せたことがあります。 一方、金利商品の代表である債券相場は政府の金融政策によって動いていくため、小麦のような急激な変動は起こりにくく、長期的に見れば終始緩やかな傾向で推移します。 このように値動きの特性が全く異なる商品を、同じ手法で売買しようとするのには無理があります。 それよりも、理論的に有効だと証明された売買手法があるなら、その手法に適した商品や市場を選ぶ方がはるかに簡単で有効でしょう。

つまり、値動きに手法を合わせるのではなく、有効性が証明されている手法に合った銘柄を見出すという発想です。 この考え方はHLバンドに限らず、あらゆる手法全般に通じる重要なポイントです。ぜひ心に留めておいてください。



第17回 逆指値とは損失を限定させるための決済(出口) 第17回 逆指値とは損失を限定させるための決済(出口)

第15回 エントリーよりも重要な「出口」の話 第15回 エントリーよりも重要な「出口」の話


tradingview社のチャートを利用しています。



執筆者の写真

監修:安村 武彦

国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト(CFTe)・AFP(日本FP協会認定)
大阪府出身。1987年に商品先物業界に入社。2005年末に業界を離れ、2006年より専業トレーダーとして商品・株式・FXの売買で生計をたてる。個人投資家が相場で勝つためには、投資家目線のアドバイスが必要不可欠と感じ業界へ復帰。真のアドバイザーを目指し現在に至る。個人投資家向けに開催する一目均衡表のセミナーは非常に分かりやすいと好評を得ている。

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