【静かに進む原油相場、次なる上昇の準備は整うか? 】今日の相場解説 (2024.10.24)デイリーマーケットレビュー
最終更新日: 2024-10-24
ページ制作日: 2024-10-24
金価格が注目されていますが、今日は原油です。
本日も金は史上最高値を更新し、昨夜21時1分に13572円まで上昇しました。
しかしその後、価格は下落し、夜中3時21分には13339円まで下げ、約6時間で233円の下落を記録しました。
引き続き、この大幅な上昇に伴い、振れ幅が大きくなることを念頭に置いて対応してください。また、連続上昇日数や上昇幅を考慮すると、明日も続落し前日の安値を割り込むような動きが見られた場合は、要注意です。
警戒を怠らないようにしましょう。
本日は、金が荒々しい動きを続ける中で、注目度がやや低くなっている原油について触れたいと思います。
前回のおさらい
原油の注目度が低い理由は、やはり価格が安いことに尽きると思います。
前回の記事(10月9日号)では、10月8日の原油価格(78.46ドル)が戻りの節目になるのか、それとも上に抜けてさらなる上昇を見せるのかに注目し、ポジションを慎重に考える必要があると書きました。
4月12日の高値87.67ドルから9月10日の安値65.27ドルまでの下げ幅に基づいて、以下のような黄金比率が確認されています。
- 38.2%戻し:73.8ドル
- 50.0%戻し:76.5ドル
- 61.8%戻し:79.1ドル
10月8日の動きを見ると、61.8%戻しの水準に到達する前に失速し、終値は38.2%戻し付近で留まりました。
この失速の背景には、イスラム組織ヒズボラがレバノンで停戦に向けた動きを見せたことが上値を抑える要因となり、それが61.8%戻しの水準と重なったため、テクニカル的にも売りが殺到し、大きな陰線が出現しました。
また、RSI(相対力指数)も4月以降、70ポイントを超えることはなく、相場の過熱感や勢いが強まる兆しは見られませんでした。
このことから、NY原油については、10月8日の値動きと指標を踏まえると、もし引き続き続落するようであれば、10月8日の高値(78.46ドル)が今後の重要なポイントとして意識される可能性が高まります。
NY原油(日足)
NY原油は、10月8日の高値をピークに下落を続け、再び70ドルを割り込んでいます。今回は、テクニカル的な視点ではなく、現在の原油市場を取り巻く環境を「ファンダメンタルズの観点」から考えてみましょう。
- 地政学的リスク イスラエル情勢やウクライナ情勢に大きな変化はなく、緊迫度は日に日に増しています。これらのリスクは、依然として市場の不確定要素として存在しています。
- 米大統領選挙の影響 新たに浮上している材料として、激戦となる米大統領選があります。もしトランプ前大統領が勝利すれば、イスラエルとイランの対立が激化する可能性が高いと考えられています。トランプ氏は以前からイランに対して攻撃的な姿勢を取っており、11月5日の米大統領選が近づくにつれ、この点が材料視される可能性があるでしょう。
- 需給面の影響 米エネルギー情報局(EIA)によると、9月以降の原油在庫は増加傾向にあります。この在庫増は価格上昇を抑制する要因となっており、さらに夏場の需要期が終了したことで原油消費は鈍化しています。加えて、中国の景気悪化懸念から世界的な供給過剰が意識されており、米国の原油在庫の増加が続くと相場の上昇はさらに阻害される可能性があります。
- サウジアラビアの動向 サウジアラビアは原油市場のシェア回復を目指し、増産の準備を進めています。さらに、1バレル=100ドルという非公式の価格目標を取り下げる方針を発表しました。 OPECプラス(OPECと非加盟の主要産油国で構成される協定)は、これまで原油生産を削減して価格を支えてきましたが、米国など非加盟国による供給増加や中国の需要低迷により、NY原油価格は昨年9月をピークに、2023年の安値と並ぶ水準まで下落しています。
NY原油(週足)
OPECプラスは、原油価格が14カ月ぶりの安値をつけたことを受け、10月と11月に予定していた増産を延期することで合意しました。
さらに、必要に応じて減産幅の縮小をさらに延期、もしくは撤回する可能性も表明しています。
しかし、原油価格の低迷が長引いたとしても、OPECプラスは計画通り12月から増産を開始する予定です(一部報道では、12月までは現状維持との見方もあります)。
サウジアラビアとしては、市場シェアの縮小を嫌がっていることが大きな理由です。一度縮小した市場シェアを回復するには時間がかかるとされており、そのため増産やシェアの維持に強い意向を示しています。
国内の原油価格
次に、国内の原油価格を見てみましょう。
国内の原油価格は、60,000円~80,000円のレンジの中でおおよそ動いています。
ドバイ原油(日足)
国内原油価格と海外原油価格の比較(日足)
国内原油価格の要因
- 為替レートの影響 国内原油価格は円建てで取引されるため、ドル円相場が直接影響します。たとえ国際的に原油価格が下落しても、円安が進行している場合、国内の原油価格は大幅に下がりにくくなることがあります。 特に、最近の円安傾向が続く中では、国際価格の下落幅ほど国内の価格には反映されない可能性があります。
- 地政学的リスクと供給面の影響 中東情勢やウクライナ情勢といった地政学的リスクが、国際原油価格の変動要因となる一方で、国内価格にも間接的な影響を及ぼしています。 サウジアラビアなど主要産油国の生産調整によって、価格が上下することも多いため、引き続き供給サイドの動向を注視する必要があります。
- 需給バランスの変化 中国経済の減速により、世界的な需要のピークが過ぎたとの見方が広がっている中、供給過剰の懸念が浮上しています。 これに伴い、国際的な原油価格の下落が続けば、国内の原油価格も長期的にはレンジの下限に向かう可能性があります。
テクニカル分析から見た国内原油価格
ドバイ原油(日足)
7月4日の高値84,120円から9月12日の安値58,250円までの下落幅に対する黄金比率を適用すると、次の水準が得られます。
- 38.2% 戻し:68,130円
- 50.0% 戻し:71,190円
- 61.8% 戻し:74,240円
10月8日の戻り高値70,670円は、50%戻しの71,190円や8月14日の高値71,340円を意識した動きになっています。
目先の動きとしては、10月21日の「安値64,550円」に注目しておく必要があります。
現在の状況では、弱い材料が多い中で、そちらに振られやすいと考える人が多いかもしれませんが、9月12日の安値を起点とした上昇トレンドはまだ継続していると見られます。
64,550円を割れた場合、この上昇トレンドの考えは完全撤退するべきです。しかし、ここ数年の6万円以下の安値では売り込まれにくいパターンも尊重する必要があります。
また、最近は金との逆相関の関係も見られるため、仮に金が現在の高値から下落を始めた場合、目立たなかった原油が一気に注目を集める可能性もあります。
原油が本当に注目を浴びるためには、「70,670円」(10月8日高値)・「71,190円」(50%戻し)・「71,340円」(8月14日高値)という「抵抗価格の三銃士」を突破することが条件です。その時には、追撃参戦も可能となるでしょう。
価格が安い時には弱い材料に目が行き、価格が高い時には強い材料に目が行く――これが大衆心理です。相場はその逆を行くものです。
「人の行く裏に道あり花の山」
「強気相場は悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、陶酔の中で消えていく」
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