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「だまし」とうまく付き合っていくには?「だまし」とうまく付き合っていくには?

「だまし」とは

テクニカル分析は、過去の価格変動を分析して未来の価格動向を予測する手法です。この分析ではチャートパターンやテクニカル指標を用いるものの、それらが常に正確な将来予測を提供するわけではありません。予測に反する価格動きが生じた場合、これを「だまし」と称します。テクニカル分析を駆使する上で、「だまし」は避けられない要素です。投資で成功を収めるためには、「だまし」と上手に付き合っていくことが欠かせません。


「だまし」とは?

サポートラインとレジスタンスラインについては下記のページをご覧ください。

サポートラインとレジスタンスラインとは サポートラインとレジスタンスラインとは



レンジブレイクの「だまし」

このコラムでは、レンジブレイク時に発生する「だまし」に特に注目します。
相場は、レンジ相場とトレンド相場が交互に出現し、その結果として価格は変動します。レンジ相場からトレンド相場への移行期にポジションを取ることは、ブレイクアウト戦略の核心です。

レンジブレイクの「だまし」


レジスタンスライン(抵抗線)とサポートライン(支持線)が定義する狭い価格帯での持続する小幅な変動、いわゆるレンジ相場からのブレイクアウトは、新たなトレンドの形成を示唆する可能性があります。 この新しいトレンドに乗じることができれば、投資家には大きな利益の機会が開かれます。そのため、ブレイクアウトを狙う投資家は少なくありません。

しかし、ブレイクアウトの際には「だまし」が頻出し、価格がレンジを突破したからといって、必ずしも新たなトレンドが形成されるとは限りません。 この「だまし」は価格が一時的にレンジ外へ動いたかのように見せかけ、その後、価格が元のレンジ内へ戻ることがあります。


サポートライン割れの「だまし」


レンジ相場の上限と下限、つまりレジスタンスラインとサポートラインの周辺には、投資家が設定したストップ注文が集中しています。 レンジの上限や下限付近に集まるストップ注文が次々と実行されると、価格はブレイクアウトの方向へ強く推進されます。このような急速な価格変動は、新たなトレンドの兆しとなり、投資家にとって大きな取引のチャンスを提供します。
ただし、ストップ注文が執行されたことによる一時的なレンジブレイクにすぎず、レンジ内に再び戻ってしまう「だまし」になる可能性もあります。 投資家はこのような「だまし」を見分け、誤ったシグナルに惑わされないために、慎重な分析と戦略が必要です。


ストップ注文の実行による「だまし」


「だまし」を回避するには?

ブレイクアウトにおける「だまし」は頻発し、それを完全に避けることは現実的には不可能です。しかし、この「だまし」を極力避けるためのテクニックは存在します。以下では、そうした回避策をいくつか紹介します。


長い時間軸のチャートを確認する

「だまし」を回避するには?①

WTI原油の日足チャートです。このチャートでは、下降トレンドが継続した後、72ドルのサポートラインと82ドルのレジスタンスラインを持つレンジ相場に移行したことが分かります。その後、価格は再びサポートラインを下回り、レンジブレイクの形を見せています。通常、このような状況では下降トレンドが継続していると見なし、売りポジションを取ることが一般的な戦略です。


「だまし」を回避するには?②

しかし、実際の相場では、価格がサポートラインを下回った後、再度サポートライン内へ戻り、レジスタンスラインに達するまで上昇しました。これにより、レンジブレイクは結局「だまし」であったことが明らかになります。このような「だまし」を事前に回避する方法が存在したのでしょうか?


「だまし」を回避するには?③

このケースでの「だまし」を回避する一つの方法は、日足チャートだけでなく週足チャートも確認することでした。日足ではサポートラインがブレイクしているように見えましたが、週足チャートを見ると、その直下に別の週足サポートラインが存在していたのです。通常、週足のサポートラインは日足のサポートラインよりも強力な支持を提供します。 この事実は、異なる時間枠を用いた分析が投資家にとって重要なツールであることを示しています。長期的な視点を持つことで、短期的な市場の動きに惑わされず、より確実な判断を下すことができます。特に、レンジブレイクを検討する際には、より広い時間枠でのサポートとレジスタンスの位置を理解することが、誤ったブレイクアウトに対する保険となり得ます。



仕掛けるタイミングを遅らせる

レンジブレイク直後に急いでポジションを持つのではなく、レンジブレイク後の価格動向を観察してからエントリーすることで、レンジブレイクの「だまし」を避けることができる可能性があります。
例えば、レンジをブレイクした後には、「プルバック」と称される、ブレイクした方向と反対への動きが見られることがあります。 プルバックは、レジスタンスラインを突破して価格が上昇した場合にはレジスタンスライン付近まで価格が下がる現象を指し、逆にサポートラインを下回って価格が下落した場合にはサポートライン付近まで価格が上昇する現象を意味します。 このプルバックの後、価格が再度ブレイクの方向に動き出すことを確認した上でエントリーを行うのがブレイクアウトプルバックです。


「だまし」を回避するには?④


この戦略は「だまし」を避ける可能性を高めるものの、エントリーが遅れる、またはプルバックが発生せずに価格が大きく動いてしまうと、取引機会を逃すリスクがあります。テクニカル分析の世界では一般的に、「だまし」を避けようとすることは、同時にエントリーチャンスを逃す可能性を意味します。



「だまし」を利用する

「だまし」を避けるのは難しいものの、実は「だまし」を上手く利用するトレーディング戦略も存在します。以下のシナリオを考えてみましょう。価格がレンジをブレイクしたものの、再びレンジ内に戻る状況です。

「だまし」を利用する方法

Ⓐ地点での価格がサポートラインを下回った際、二つの動きが発生します。「レンジ内の買い勢力による決済売り」と、「レンジブレイクを受けた新規の売り仕掛け」です。 しかし、レンジブレイクが失敗し価格がレンジ内に戻ると、Ⓑ地点での動きが変わります。Ⓐ地点で売りを仕掛けた投資家の「損切り買い注文」、「レンジに戻ったことによるレンジ下限での新規買い注文」、そして「Ⓐ地点で損切りした投資家の買い戻し」など、買い圧力が増す傾向にあります。
結果として、Ⓑ地点では価格が上昇する圧力が増します。

「だまし」のあとの注文の変化

Ⓐ地点で売りエントリーした投資家は、早期にポジションを決済することが賢明です。また、ポジションを持っていない場合、Ⓑ地点での買い勢力の強まりを利用して新たに買いエントリーをするのも一つの戦略です。


「だまし」を利用したトレードとは


このように、価格が一定範囲で持ち合った後に下方へ急落し、その後逆方向に動くパターンは、非常に強力なトレードシグナルとなり得ます。 実際に、持ち合いから直接下方に動くパターンよりも、一度「だまし」を挟んで逆方向に動くパターンの方が、より力強いトレンドが発生しやすい傾向にあります。

このパターンの強さは、市場参加者の期待を裏切ることで、多くのストップロス注文を引き出し、それが結果として大きな価格の動きを引き起こすからです。 一度「だまし」によって誤った方向へ動かされた後、価格が逆方向に大きく動くと、未決済のポジションを持つ投資家が急いでポジションを閉じることで、さらに価格を動かす力が加わります。 このようなシナリオでは、特に、予期せぬ方向への強い動きによって、新たなトレンドが始まる可能性が高まります。 したがって、このタイプのパターンを認識し、適切に対応することは、投資家にとって大きな利益をもたらす機会となり得ます。 価格が予想外の動きをした後には、特に注意深く市場を観察し、確かなトレンドが確立されたことを確認してからポジションを取ることが重要です。



tradingview社のチャートを利用しています。

執筆者の写真

監修:安村 武彦

国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト(CFTe)・AFP(日本FP協会認定)
大阪府出身。1987年に商品先物業界に入社。2005年末に業界を離れ、2006年より専業トレーダーとして商品・株式・FXの売買で生計をたてる。個人投資家が相場で勝つためには、投資家目線のアドバイスが必要不可欠と感じ業界へ復帰。真のアドバイザーを目指し現在に至る。個人投資家向けに開催する一目均衡表のセミナーは非常に分かりやすいと好評を得ている。

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