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移動平均線のダマシについて考えてみよう移動平均線のダマシについて考えてみよう

最終更新日: 2024-09-05

ページ制作日: 2024-03-06

移動平均線の「ダマシ」

移動平均線は一般的なトレンドフォロー指標の中では最も有効に機能するツールのひとつです。しかしながらこの移動平均線には二つの弱点があります。 ひとつは相場がトレンドを形成しない保合い時に「ダマシ」が発生するという点でしょう。もう一つは平均値を用いているために感応度が低く、実際の売買時においては若干エントリーが遅れ気味であるという点です。

移動平均線の基本的な見方 移動平均線の基本的な見方

保ち合いの時に「ダマシ」が多く発生するという点は、移動平均に限らずどのトレンドフォローシステムにおいても同じことがいえると思います。そこでこのトレンドフォローシステムの保合い時における「ダマシ」を防ぐ方法を考えてみることにしましょう。

移動平均線のダマシ

「ダマシ」とは、投資のシステムが誤ったシグナルを発する状態を指します。この現象は特にレンジ相場、すなわち価格が特定の範囲内で推移する「保ち合い」の時期に顕著に発生しやすいです。移動平均線を用いた分析では、このような状況を避け、ダマシを防ぐための有効なアプローチがあります。


保ち合いの期間における移動平均線の特徴を観察することで、ダマシを避けるための手がかりを得ることができます。具体的には、保ち合いに入ると、中期および長期の移動平均線の傾きが失われること、そして、異なる期間の移動平均線間の距離が縮まることが観察されます。これに対して、明確なトレンドが存在する時は、中期および長期の移動平均線は顕著な傾きを持ち、異なる期間の移動平均線間の距離はより広がっています。


「ダマシ」が発生しやすい環境

・中期および長期の移動平均線の傾きが失われる
・異なる期間の移動平均線間の距離が縮まる


これらの現象、つまり異なる期間の移動平均線の収縮と拡散、およびその傾きの変化は、移動平均線を用いてダマシを防ぐ際の重要な指標となります。移動平均線の傾きをどのように定義し、収縮をどのように捉えるかは、個々の投資家が自身の投資戦略に合わせて試行錯誤する必要があります。このプロセスを通じて、より信頼性の高い取引シグナルを識別し、ダマシによる誤った判断を減らすことが可能になります。実践と経験を積むことで、投資成績の向上につながる洞察を得ることができるでしょう。



移動平均線とボリンジャーバンド

移動平均線の「ダマシ」を回避するには?

移動平均についてもう少し踏み込んで解説してみましょう。テクニカル指標というのはそれぞれ弱点があるので単体で使うのは好ましくありません。 その意味では、それぞれの弱点を補うために各種シグナルにフィルターを適用することは有効な手段となります。

移動平均が発するシグナルには、「クロスする」というものがあります。 価格が平均線を上回る、又は、価格が平均線を下回る。このクロスをエントリーポイントとして使うという考え方があります。これを参考に売るか買うかという考え方です。 しかし、移動平均にも弱点はあります。それを補うために使うフィルターについて考えてみましょう。 フィルターを使うことの意味は、感応度の高すぎるシグナルを鈍くしてあげる、つまりダマシを少なくしてあげるという目的があります。 そして、より有利な状態を見つけてあげることで、同じクロスでもより優位な方向のクロスを採用するという考え方です。そうすることによって、ダマシが減少し勝率が向上するのではないかという考え方です。

フィルターを使うことのデメリットは、エントリーとエグジットのタイミングが遅れるということです。

移動平均線にフィルターをかける
クロスにフィルターをかける

移動平均線と価格のクロスを取引シグナルとして使用する場合、多くのトレーダーは終値が移動平均線をクロスした時点でシグナルを確定する方法を採用しています。しかし、より信頼性の高いシグナルを求めるならば、日中の全ての価格動きが移動平均線をクロスした瞬間をもって、初めて真のクロスと認識するアプローチが有効であると考えられます。

この方法では、その日の最高価格と最低価格を含む、すべての価格が移動平均線をクロスすることをクロスの条件とします。この考え方によれば、価格の全範囲が移動平均線を越えた瞬間をもって、より確実なトレードシグナルとして認識することができます。このアプローチを取ることで、単に終値がクロスした場合よりも、市場の動きをより正確に捉え、ダマシを避けることが可能になると期待されます。


フィルター1
移動平均線のクロス1


次に、クロスする場合、ほんの僅かだけクロスするというケースもあります。 そうした場合、ダマシであることも考えられるわけですが、それを防ぐために、 クロスの条件をある一定幅以上クロスすることをクロスの条件とすることでフィルターとして使うことができます。
少しだけクロスするような微細な動きではなく、 ある程度の値幅以上の交差を確認することでクロスのシグナルの信頼性を向上させることができます。


フィルター2
移動平均線のクロス2


その他、時間の経過をフィルターとして用いることもできます。クロスした後、何日間も保ち合うというようなことはよくあることです。そうした状況の中で仕掛けるのはあまり好ましいことではないので、そうしたダマシを避けるために、例えば2日連続あるいは3日連続でクロスの状態が続いたらそこで初めてクロスと認定しようという考え方です。


フィルター3
移動平均線のクロス3

クロスする時のローソク足の形状

また、移動平均線のクロスオーバーにおいて、クロスが発生した日のローソク足が陰線であるか陽線であるかは、そのシグナルの解釈に重要な意味を持ちます。具体的には、価格が移動平均線を下回ってクロスした場合に注目します。

陽線でクロスする場合、その日の価格動向を見ると、開始時点では売りポジションを取った投資家が損失を被っている可能性が高いことを示します。 このシナリオでは、価格が移動平均線を下回っていても、終値が開始価格より高いため、その日に売りを入れた投資家は期待したような利益を得られない可能性があります。 この状況は、市場における買い手と売り手の間の力の均衡を示唆しており、必ずしも売り手が市場を支配しているわけではないことを意味します。

陽線でクロス
陽線でクロス
一方で、陰線でクロスする場合は、その日の市場が開始価格よりも安い価格で終わったことを意味します。 これは、買い手よりも売り手が強い立場にあることを示し、価格が下落傾向にあることを示唆しています。 このような状況は、より強い下落トレンドの兆しとして解釈でき、投資家にとっては売りシグナルとしてより信頼性が高いと考えられます。

陰線でクロス
陰線でクロス
このローソク足の性質を移動平均線のクロスオーバー分析におけるフィルターとして利用することは、市場のノイズを減らし、より信頼性の高い取引判断を下すための有効な手法です。 投資戦略において、このような細かな観察を取り入れることで、より精度の高いトレードの実行が可能となります。 したがって、クロスオーバーの際のローソク足の形状を注意深く観察することは、ダマシを避け、成功率を高めるために重要な考慮事項となります。


他のテクニカル指標との併用

他のテクニカル指標と併用するということは非常に重要なことです。特に、移動平均より長期のシグナルと併用するのが好ましいと考えます。例えば、HLバンドでブレイクが発生している方向にクロスした時、あるいはパラボリックのトレンドの方向にクロスした時に新規に仕掛けるというやり方です。長期のトレンドが上を向いているのに、移動平均のクロスが下を示しているからといって売りを仕掛けるのは好ましくありません。


HLバンド

5日の移動平均線と20日HLバンドを描いたチャートです。グラフ下に示されている青の線で描かれた線は、HLバンドトレンドINDEXでHLバンドが示すアップトレンドとダウントレンドです。+1がアップトレンド、-1がダウントレンドを示します。HLバンドがアップトレンドに示している時に価格が移動平均を上抜いたら買い、HLバンドがダウントレンドを示している時に価格が移動平均線を下抜いたら売りという判断をします。

移動平均線とHLバンド

ここでは20日のHLバンドを採用してみましたが、その根拠は、レバレッジの利いた市場では主要なエネルギーが残っているのは20日間くらいだと言われているからです。それが機能するかどうかは入念なバックテストを行う必要があります。


下記のチャートは10日移動平均を採用しました。感応度は鈍くなりますが、ダマシが減少していることが分かります。どちらを採用するかはそれぞれの売買戦略によって異なります。いずれも、背景にあるのはHLバンドによるトレンドの優位性を利用しているということです。

移動平均線とHLバンド2

もう一つフィルターとして移動平均線の上下にバンドを加えるという方法を紹介してみたいと思います。ある一定幅のバンドを超えて、反対方向にクロスしたら売買ポイントとして認定しようというものです。この方法は非常によく使われる手法で、その指標も実にたくさん存在します。その一部を紹介してみたいと思います。


エンベロープ

エンベロープと移動平均線を併用するケースの例です。エンベロープというのは、移動平均の上下に、「移動平均×n%」という線を描いたものです。これを上に抜けたら買い、下に抜けたら売りというような見方をします。中には、この真反対を行う人もいます。つまり、上に抜けたら売り、下に抜けたら買いということです。このような使い方をする場合、バンドの幅の設定の仕方やボラティリティの測定の仕方を目的に添ったように設定し、使い分けているわけです。

下記のチャートは、緑線(真中の線)が26日の単純移動平均で、青い線が移動平均×±4%のバンドです。このチャートをみると、たまたまですが4%がピークであることが分かります。もし、この状況が長く続くようであれば、4%を超えたら即座に逃げるという対応が必要であると判断し、活用することができます。基本的には、エンベロープが示すサインと移動平均のサインが合致したときに売買を実行します。

移動平均線とエンベロープ


ボリンジャーバンド

ボリンジャーバンドをフィルターとして使用すると、移動平均の上下に、「標準偏差×n倍」というバンドが描かれます。 下記のチャートは、21日の単純移動平均(赤)と1標準偏差(緑)と2標準偏差(青)のボリンジャーバンドです。1標準偏差と2標準偏差では、そこに収まる確率の違いが一目瞭然ですが、どちらをフィルターとして使用するかはやはりその人の売買プランにより異なります。感応度を高くするか低くするかの違いだけでなく、自分の売買戦略にはどちらが適しているかを十分に見当するとよいでしょう。 エンベロープ同様、両方のサインが合致したときに売買を仕掛けるのが基本です。


移動平均線とボリンジャーバンド

ここに紹介した2つのフィルターは一見、同じようなラインを描いています。しかし、実際に売買をしていると、これらの違いに気付いてくるはずです。それぞれの指標が、どの様なことを目的に開発されたかをよく確認した上で、自分の売買にあったフィルターを使用することが重要です。


また、以下のようなことも考えられます。 例えば、高値と安値を利用してバンドを描いてみる。つまり、高値だけを結んだ線と安値だけを結んだ線の2本。これだけでも上下にバンドができますので、移動平均がこれを超えたらシグナルにしようとするのもひとつのアイデアではないでしょうか。過去の高値の平均を超えたから、あるいは過去の安値の平均を割り込んだからこれをシグナルとしようという考え方です。 このように、自分でオリジナルの指標を考えてみることは非常に重要なことです。例え機能しないものだと分かっても、そこから得るものは必ずあるはずです。色々考え試してみるというのも投資力を向上させるには必要だと思います。


執筆者の写真

監修:安村 武彦

国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト(CFTe)・AFP(日本FP協会認定)
大阪府出身。1987年に商品先物業界に入社。2005年末に業界を離れ、2006年より専業トレーダーとして商品・株式・FXの売買で生計をたてる。個人投資家が相場で勝つためには、投資家目線のアドバイスが必要不可欠と感じ業界へ復帰。真のアドバイザーを目指し現在に至る。個人投資家向けに開催する一目均衡表のセミナーは非常に分かりやすいと好評を得ている。

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