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エリオット波動とはエリオット波動とは

最終更新日: 2024-10-04

ページ制作日: 2023-09-11

エリオット波動

エリオット波動理論(Elliott Wave Theory)は、市場の価格パターンやトレンドを分析し、将来の価格変動を予測しようとするテクニカル分析のアプローチです。この理論は、1930年代にラルフ・ネルソン・エリオットによって提唱されました。

波動理論の基本

エリオット波動理論では、市場のトレンドは主に5つの推進波と、それに続く3つの修正波で構成されると考えられています。この8つの波を組み合わせて市場のパターンを予測します。

エリオット波動とは

推進波は、主要なトレンド方向に沿って進行する波です。通常、1から5の数字で表され、1, 3, 5が上昇波、2, 4が下降波です。
修正波は、主要なトレンドに逆らって進行する波です。通常、アルファベット(A, B, C)で表され、AとCが下降波、Bが上昇波です。


エリオット波動実例
エリオット波動実例

上記の波動は、tredingviewのインジゲータ「Elliott Wave Absolute」によってカウントされたものです。


相場の変動は3歩進んで2歩下がるというサイクルが連続しているという考え方だね。



エリオット波動では、そのサイクルの波の数と形状に焦点を当てて相場の動きを予測しようという分析方法になります。


エリオット波動の3つの原則

第2波が第1波よりも安値を付けることはない
エリオット波動原則1

第2波の下降で第1波の安値を割り込んで安値を付けることはありません。
第1波が新しいトレンドの始まりを示す強力な波であると仮定しています。そのため、第2波は一時的な調整であることが一般的で、第1波の安値を大幅に下回ることは稀です。第2波が第1波の安値を割り込んだ場合、エリオット波動の基本原則に反すると考えられ、通常、波のカウントや分析の再評価が必要とされます。


第3波が一番短くなることはない
エリオット波動原則2

上昇波動である「第1波」と「第5波」と比べて、「第3波」が一番短い波動となることはありません。
第3波はしばしば「モーターワブル」(the engine of the market)と表現されます。これは、第3波がトレンドを推進し、価格が急速に変動する特徴的な波であることを示しています。第3波は、投資家やトレーダーにとって最も利益をもたらすことが期待される波であり、トレンドの継続性を示す重要な兆候です。 通常、第1波や第5波よりも長く、価格の上昇または下落がより強力です。これは市場参加者の多くがトレンドに参加し、市場が大きく動くためです。


第4波が第1波の高値を下回ることがない
エリオット波動原則3

「第4波」の安値が、「第1波」の高値を下回ることはありません。
第4波はトレンドの調整を示し、一時的な反転として現れることがあります。第4波が第1波の高値を下回ることがないという原則は、第4波がトレンドの終了を意味するものではなく、トレンドの調整であることを強調しています。(エリオット波動理論はダウ理論から派生した理論であり、1波の高値を4波で割り込むことはダウ理論のトレンドの定義に反します。)


フラクタル構造

フラクタル構造は、同じパターンが異なるスケールで再帰的に現れる性質を指します。エリオット波動はこのフラクタル性を示すテクニカル分析ツールの一つであり、小さな波が大きな波の一部であることを示唆します。また、大きな波もさらに大きな波の一部となります。このフラクタル性により、トレーダーは市場の構造を異なる時間枠で理解し、トレンドの方向性や転換点を特定しやすくなります。

フラクタル構造

エリオット波動理論によれば、5つの上昇波(1、2、3、4、5)と3つの下降波(A、B、C)からなる基本的な波のパターンは、異なる時間軸やスケールで繰り返されることがあります。例えば、日足チャートで見られる波のパターンが、週足チャートや月足チャートでも同様の形状を示すことがあります。


エリオット波動理論においても、相場の価格変動がフラクタル的な構造を持つとされています。つまり、「大きな波が中にさらに小さな波を含み、その小さな波の中にも同じような構造が繰り返される」という考え方です。



どの時間足、日足、週足、月足を見ても3歩進んで2歩下がるという形状が連続することでチャートが形成されているということだね。


波の延長(エクステンション)

エリオット波動理論において、"エクステンション"(Extension)は、通常の波のカウントに比べて長く、価格が過去の波の上限を大幅に超えて進行する現象を指します。エクステンションは、市場で強力なトレンドが発生していることを示す重要なパターンの一つです。

エクステンション

エクステンションの波では、価格が過去の波の上限を大きく超えることがあります。これは、市場参加者の強い意欲や勢いを反映しており、トレンドの継続性を示すものとされます。エクステンションの波は、通常、推進波3推進波5に現れることが多いです。



波の特徴

第1波

エリオット波動理論では、第1波が上昇トレンドの始まりを示すと考えられています。第1波の進行中に取引量が増加することが一般的です。これは市場の関心と活気が高まっていることを示します。第1波は通常、他の波と比べて比較的短期間に発生します。しかし、具体的な期間は市場やアセットによって異なります。

エリオット波動第1波の特徴

第2波

第2波は主要な上昇トレンドの最初の調整波となります。第2波の段階では上昇トレンドに対する懐疑的な見方が強く深い修正になりやすいという特徴があります。第2波の進行中には、取引量が減少することが一般的です。市場の勢いが1波ほど強くないため、取引者の関心がやや低下します。

エリオット波動第2波の特徴

第3波

第3波は、通常、非常に強力な上昇トレンドを示します。この波では価格が急騰し、市場参加者の多くが買いポジションを取ります。第3波にはエクステンション(伸張)が発生する可能性があります。これは、第3波が特に長く、予想よりも多くの上昇を示す現象です。第3波の進行中には、取引量が急増します。これは市場の関心が高まり、新たな投資家やトレーダーが市場に参加することを示唆します。

エリオット波動第3波の特徴

第4波

第4波は、前の上昇波(第3波)の急騰に続いて価格が一部調整される波です。価格の上昇が継続するのではなく、一時的な下落が見られます。第4波は通常、複雑な価格パターンを示します。これは、価格が上昇から下降に切り替わる過程で、しばしばシンプルな下降波や三角形のような形状を持ちます。

エリオット波動第4波の特徴

第5波

第5波は、トレンドの最後の上昇段階を表します。これは通常、価格が前の上昇波(第3波)の高値を更新するという形で現れます。第5波にはエクステンション(伸張)が発生する可能性があります。 また、第3波がエクステンションで大きく上昇した場合は、第3波の高値を超えずに第5波が終了する"フェイラー"(Failure)と呼ばれる現象が起きる可能性があります。

エリオット波動第5波の特徴

第A波

A波は調整波の最初の波であり、下落トレンドの開始を示すとされています。A波は通常、複雑な価格パターンを示します。これには下降トライアングル、ダブルトップ、またはダブルボトムなどが含まれることがあります。

エリオット波動第A波の特徴

第B波

B波はA波(下降波)の後に現れ、一時的な価格の反発を示すことが一般的です。これは前の下降トレンドが続かないことを示唆します。B波の上昇はこれまでのトレンドと同じ方向への上昇となりますので、上昇トレンドが再開したと投資家の判断を誤らせることがあります。

エリオット波動第B波の特徴

第C波

C波は前の上昇トレンドやB波(反発波)の後に現れ、価格が下落する波です。C波はこれまでの上昇トレンドの終焉を示唆するもので、下降トレンドの始まるきっかけとなる可能性があります。 C波の進行中には、市場参加者の心理が変化します。前の上昇トレンドやB波の反発に対する楽観的な感情が鈍化し、悲観的な感情が広がることがあります。

エリオット波動第C波の特徴

エリオット波動とフィボナッチ

エリオット波動理論では、波の長さや時間枠にパターンがあります。一部のトレーダーは、特定の波の長さがフィボナッチ数列に関連することを観察し、市場の反転ポイントやサポート/レジスタンスレベルを特定するのにフィボナッチ数列を適用することがあります。

フィボナッチについてはこちらをご覧ください。▶フィボナッチとは


エリオット波動に現われるフィボナッチの一例

エリオット波動の波に現れる傾向のあるフィボナッチの一例です。

エリオット波動のフィボナッチ1 エリオット波動のフィボナッチ2 エリオット波動のフィボナッチ3

原油週足の実例
原油週足のフィボナッチ

エリオット波動の利用方法

エリオット波動の問題点

エリオット波動理論は、ある波がどの程度の長さであるべきかや、波の形状がどのようであるべきかについて厳格な基準を提供しません。したがって、同一のチャートや時間軸を使っても、トレーダーやアナリストは異なる波のカウントやパターンを見ることがあります。 エリオット波動を使うトレーダーごとに複数の予測が可能であり、どれが正解であるのかは価格が動いた後にならないとわかりません。さらに、価格の値動きに応じて波のカウントを変更することが一般的であり、トレーダーが後付けでシナリオを変更することがあります。


波をカウントするルールが緩いので、人によって様々な見方ができるよね。



後付けでいくらでもエリオット波動の理論に当てはめられるので、エリオット波動の予測には意味がないという人もいるね。


エリオット波動の利用方法

エリオット波動理論の大きな利点は、市場参加者の心理が価格変動にどのように影響するかを理解できることです。この理論は、市場の価格変動が波動として現れ、これらの波動が特定のパターンに従うという考えに基づいています。具体的には、推進波(1波から5波)は上昇トレンドが発生した際の投資家心理を表し、修正波(A波からC波)はトレンドが終了する際の心理を表します。 これらの波動パターンを理解することで、投資家は市場の心理的な変化を把握し、将来の価格動向を予測する際の洞察を得ることができます。投資家の心理は一般的には時代や銘柄に関係なく類似しており、これは将来も変わることはないと言えるでしょう。

さらに、エリオット波動理論を活用することで、異なるシナリオを想定することが可能です。一つの確定的な予測を立てるのは難しいかもしれませんが、波動をカウントすることで複数の可能性に備えることができます。これにより、リスク管理の向上やトレード戦略の構築に役立つでしょう。 エリオット波動理論を正しく理解し、市場心理を読み取る力を養うことは、トレーダーにとって非常に有益なスキルです。



tradingview社のチャートを利用しています。


執筆者の写真

監修:安村 武彦

国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト(CFTe)・AFP(日本FP協会認定)
大阪府出身。1987年に商品先物業界に入社。2005年末に業界を離れ、2006年より専業トレーダーとして商品・株式・FXの売買で生計をたてる。個人投資家が相場で勝つためには、投資家目線のアドバイスが必要不可欠と感じ業界へ復帰。真のアドバイザーを目指し現在に至る。個人投資家向けに開催する一目均衡表のセミナーは非常に分かりやすいと好評を得ている。

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