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パラボリックパラボリックとは

パラボリックについて

パラボリック(Parabolic SAR)は、トレンドの反転ポイントを示すためのテクニカル分析の指標の一つです。「J.W.ワイルダー」氏によって開発されたテクニカル指標で、RSIやDMIなどと同じく、市場の動向を分析するための有用なツールです。

パラボリックのシグナル

パラボリックの使い方
パラボリックの構成

パラボリックは、トレンド分析に特化したテクニカル指標です。SAR(Stop and Reverse)と呼ばれる点のみで構成されており、トレンド方向とトレンド転換のタイミングを視覚的に把握できます。


SARの動きとトレンドの関係
  • 下降トレンド: SARは価格の上に表示され、トレンド継続を示唆します。
  • 上昇トレンド: SARは価格の下に表示され、トレンド継続を示唆します。

トレンド反転のシグナル
  • 下降トレンドから上昇トレンドへ: SARが価格を下抜けた時、買いシグナルとなります。
  • 上昇トレンドから下降トレンドへ: SARが価格を上抜けた時、売りシグナルとなります。

パラボリックの買いシグナルと売りシグナル


SARと価格が交差して上昇トレンドから下降トレンドに転換する際、価格の下にあったSARが価格の上に表示されます。この状況では、上昇トレンド中の最高値がSARの初期値となります。逆に、下降トレンドから上昇トレンドに転換する際、価格の上にあったSARが価格の下に表示されます。この場合、下落トレンド中の最安値がSARの初期値となります。

パラボリックの初期値

価格がパラボリックより上にあれば上昇トレンド、価格がパラボリックより下にあれば下降トレンド。比較的わかりやすいテクニカル分析だね。



トレンド反転のシグナルもパラボリックと価格がクロスするポイントなのでわかりやすいです。


パラボリックの注意点

パラボリックは、トレンドの方向性と強さを判断するためのテクニカル指標です。トレンド転換を早期に示唆してくれる利点がありますが、レンジ相場などトレンドが発生していない状況では、「だまし」が多くなるという弱点があります。

レンジ相場のパラボリック

そのため、パラボリックは決済(exit)には使いやすいですが、新規(entry)のポジションを取る際には使いにくいと言われています。なぜなら、決済する際にはトレンドが発生しているか否かが一目瞭然であるのに対して、新規ポジションを取る際にはその後にトレンドが発生するのか否かがわからないからです。

パラボリックの弱点

パラボリックのトレンド転換のシグナルは、トレンドが終了する可能性を示唆してくれますが、下降トレンドに転換することを確約しているわけではありません。シグナルが点灯した後、相場がもみ合いのレンジ相場に移行する可能性もあります。

トレンドフォロー戦略において、利確や損切りなどの決済のタイミングを検討する際に役立ちますが、パラボリック単独で新たなポジションを取ることはリスクを伴います。 他の指標と組み合わせて、総合的に判断しましょう。


パラボリックの計算方法
SARの算出方法

SAR=前日のSAR + 加速因数 × (EP - 前日のSAR)

加速因子(AF:Acceleration Factor)は、初期値「0.02」からスタートし、上昇トレンドでは高値が更新されるごとに、「0.02」ずつ増加します。一方、下降トレンドでは安値が更新されるごとに同様に「0.02」ずつ増加します。この増加はトレンドが継続すれば、トレンドは加速するというトレンドの性質を反映させています。
最大値は「0.2」で、高値・安値が9回更新されるまで増加し続けます。

EP(極値点:Extreme Point)はは、上昇トレンド中であればそのトレンドの中の最高値、下落トレンド中であればそのトレンドの中の最安値になります。

具体的なパラボリックの計算

金標準先物(2023年12月~2024月1月)

金標準パラボリック

上昇トレンド中は、高値を更新するたびにAF(加速因数)が「0.02」ずつ増加します。加速因数の増加により、SARの上昇スピードが加速します。上記のチャートでは、上昇トレンドが開始したとする12月28日の加速因数の初期値「0.02」から、最高値を更新するたびに0.04、0.06、0.08…と増加していきます。加速因数は最大で「0.2」まで増加します。

SARは、トレンドが継続すると変化量が増加しますので、相場がもみ合いなどでトレンドが失速した場合にはシグナルが点灯する可能性が高まります。

なお、加速因数の初期値「0.02」、増加量「0.02」、最大値(Max Value)「0.2」は、パラボリックを考案したワイルダーが推奨しているパラメーターです。ただし、相場の環境や銘柄によっては、これらのパラメーターを調整する必要があります。



パラボリックの計算

高値 当日の
SAR
EP
最高値
AF
加速因数
翌日の
SAR
12月28日 9530 9216 9530 0.02 9222
12月29日 9454 9222 9530 0.02 9228
1月4日 9454 9228 9530 0.02 9234
1月5日 9530 9234 9530 0.02 9240
1月9日 9553 9240 9553 0.04 9252
1月10日 9464 9252 9553 0.04 9264
1月11日 9512 9264 9553 0.04 9276
1月12日 9545 9276 9553 0.04 9287
1月15日 9597 9287 9597 0.06 9306
1月16日 9636 9306 9636 0.08 9332
1月17日 9631 9332 9636 0.08 9356
1月18日 9634 9356 9636 0.08 9379
1月19日 9666 9379 9666 0.10 9407
1月22日 9701 9407 9701 0.12 9442
1月23日 9664 9442 9701 0.12 9473
1月24日 9685 9473 9701 0.12 9501
1月25日 9652 9501 9701 0.12 9525
1月26日 9617 9522 9701 0.12 9543
1月29日 9646 9522 9701 0.12 9543
1月30日 9687 9543 9701 0.12 9562
1月31日 9693 9562 9701 0.12 9579
2月1日 9689 9579 9701 0.12 9593
安値 当日の
SAR
EP
最安値
AF
加速因数
翌日の
SAR
2月2日 9631 9701 9586 0.02 9698

【注意】
SARが過去2日の安値より上にある場合は、SARは過去2日間の安値となります。

1月26日SAR(9525)> 1月25日安値(9522)
1月27日SAR(9546)> 1月25日安値(9522)

1月26日と27日のSARは、2日前の最安値「9522」より高くなりますので、1月25日の安値「9522」がSARとなります。


パラボリックのパラメータの変更

多くのチャートソフトでは、パラボリックの加速因数のパラメータ(初期値、増加量、最大値)の変更が可能です。

パラボリックパラメータ

通常の初期値「0.02」、増加量「0.02」、最大値「0.2」のパラメータを、初期値「0.01」、増加量「0.01」に変更すると、SARの変化が緩やかになり、「騙し」が少なくなります。ただし、シグナルの点灯は通常のパラメータに比べると若干遅くなります。


パラボリックパラメータ

最適なパラメータの選択は個別のトレーダーや市場状況によって異なります。パラメータの変更を検討する際には、バックテストやリアルタイムでのトレード結果を注意深く分析し、適切なパラメータを見つけることが重要です。


パラボリックのメリットとデメリット
メリット
  • トレンド転換の早期警告: パラボリックは、トレンドの転換ポイントを比較的早い段階で示すことができます。これにより、トレンドの転換を見逃すことなく、利益を最大化したり損失を最小限に抑えたりすることができます。

  • 単純な視覚化: パラボリックは、チャート上にドット(点)として表示されるため、視覚的に分かりやすく、トレンドの方向性や転換ポイントを迅速に把握するのに役立ちます。

  • 利用の容易性: パラボリックは多くのトレーディングプラットフォームで利用でき、設定や解釈も比較的簡単です。これにより、初心者から上級者まで幅広いトレーダーが活用することができます。

デメリット
  • レンジ相場での誤信号: パラボリックはトレンドが発生している状況で最も効果的ですが、レンジ相場やもみ合いの時には「だまし」を出す可能性があります。これは、トレンドがない状況でパラボリックがトレンド転換を示すことがあるためです。

  • 単独での信頼性の低さ: パラボリックは単独では信頼性が低いことがあります。特に、トレンド転換を確認するためには他のテクニカル指標や分析ツールと組み合わせて使用することが推奨されます。

  • 過去の価格に依存: パラボリックは過去の価格データに基づいて計算されるため、過去の動きに依存しています。そのため、市場が急激に変化した場合や新しい要因が発生した場合には、十分な反応が得られない可能性があります。

tradingview社のチャートを利用しています。


執筆者の写真

監修:安村 武彦

国際テクニカルアナリスト連盟・認定テクニカルアナリスト(CFTe)・AFP(日本FP協会認定)
大阪府出身。1987年に商品先物業界に入社。2005年末に業界を離れ、2006年より専業トレーダーとして商品・株式・FXの売買で生計をたてる。個人投資家が相場で勝つためには、投資家目線のアドバイスが必要不可欠と感じ業界へ復帰。真のアドバイザーを目指し現在に至る。個人投資家向けに開催する一目均衡表のセミナーは非常に分かりやすいと好評を得ている。

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